【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「店長は優しいけれど、パートのおばちゃん達桃菜にだけ厳しいんだもん…。
そりゃあ真凛ちゃんは人から好かれるからいいかもしれないけどぉ
だってあの人達桃菜の事嫌いだし、桃菜の事嫌いな人と仲良くなんかしたくないもんッ」
拗ねたようにぷいっと顔を背ける桃菜は、ふにゃあっとしているように見せて頑固な所がある。
大学時代も私以外の女の子達と仲良くしようとしなかったなあ。ていうか、どうして私は桃菜にこんなに執着されているのだろう。
確かに何かと昔から気にかけてしまうけれど。
「ね、ね、そんな事より伊織んは今日帰って来るの早いの~?」
「さっき連絡が着て18時過ぎには帰るって言ってたけど…」
「そうなんだ~。伊織んっていいよねぇ~。お洒落だしすごくかっこいいし、しかもお金持ち!
それにすっごく優しいから桃菜好きぃ」
好き?好きって一体何よ。 あんた人の旦那の事なんだと思ってんのよ。
そう思ったけれど口には出さずに、スキップをし始めた桃菜の後姿を見つめていた。
くるりと振り向いた桃菜は、私の腕をぎゅっと掴む。 黒く長い髪が風で靡いて、ふわりとシャンプーの匂いが香る。