【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

’は~い’と桃菜は弱々しく笑う。
その言葉を聞いて、あの顔を見て、部屋から出てくると途端に切なくなってしまう。

私がここまで桃菜を気にかけてしまう理由。 どうしても放って置けない理由。 それは桃菜が母同様頼りないっていうのも勿論ある。

けれどそれとは別に桃菜の家庭環境にも原因がある。 桃菜は実の両親との仲が極めて良くないらしく、高校を卒業を機に実家を出てから一度も家に帰った事がないらしい。

どうやら小さい頃にお父さんが再婚した継母と折り合いが悪かったらしい。 それが女の子との人間関係が上手くいかない原因の一つでもある、と本人は言っていた。


大した事じゃないんだけどね、とふにゃあっとした笑顔を見せて桃菜は話すけれど、その顔はいつも寂しそうだった。

そんな桃菜を見ていると、いつも切なくなる。
だけどそんな桃菜を気にかける私を友人達はお人好しだと言うのだ。

「分かっちゃいるんだけど、嫌いになれないんだよなあ…」

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