【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
子供のように頬を膨らませる母は、私にはちっとも似ていない。
私は家を出て行った父に顔も性格も似ている。
母は40代半ばになるというのにまるで若い子のようなメイクをしていて、これまた童顔である。
今でも並んで歩くと姉妹に間違わられるのが母の誇りらしい。 …こんな娘を産んじゃったものだから、祖父はきっと早死をして祖父も年齢より早く痴呆になってしまったに違いない。
「それでね、今日話し合ったんだけどおばあちゃんの恋人がね私の借金を肩代わりしてくれるって言うの。
それには条件があるんだけど」
一体どうしてそうなるのだ。
おばあちゃんに何故今更恋人がいて、どういう了見で母の借金を肩代わりしてくれると言うのだろう。
そもそも自分が恋人に騙されて作った借金のくせに
普段は顔を出さないホームまで祖母に会いに行って、困ったときだけ頼る。
少しずつ苛立ちが募り始めた頃、母の口からとんでもない言葉が飛び出す。