【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「そうだったのか…。 ん~~それは困ったなあ。 俺も今日は夕方から打ち合わせが入っていて余り早く帰って来てやることが出来なさそうだ」
「伊織さんは気にしないで下さい!」
「俺も出来るだけ早く帰れるようにするよ。
それより真凛、あのさ…
今日夜帰ったら一回ちゃんと話さないか?
俺も言葉足らずな所がある人間だから、自分の気持ちを人に伝えるのは苦手なんだ。
でも、君ときちんと話し合ったり互いの気持ちを分かり合いたいと思っている」
頭を掻きながら、少しだけ照れくさそうに口ごもりながら言う。
その伊織さんの言葉を聞いて、胸がふっと熱くなる。
私も本当はきちんと話をしなくちゃいけないと思っていたんだ。 いや、話をするというより自分の気持ちを正直に伝えたい。
そのきっかけ作りをしようとしてくれた伊織さんの不器用さが、今はとても愛しい。
「はい…!私も…!」
「うむ。じゃあ、仕事に行ってくるよ」
私達はもしかしたらこれから変わって行けるかもしれない。 心に僅かに芽生えた希望を、むき出しになりそうな気持ちを抑えておくことなんかもう出来ないよ。