【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
20時にお店が閉まって、20時半にはタイムカードを切る事が出来た。
帰りにスーパーに寄って夕ご飯の買い物と、桃菜が食べやすいようにと果物を数点買って帰る。
良くなっているといいんだけど。
今日は伊織さんに話をしようと言われた。
さすがの桃菜も風邪をひいている時くらい大人しいから、久しぶりに二人でゆっくりと話せるだろう。
桃菜には悪い気がしたけれど、スーパーの袋を抱えて帰り道、自然とにやけてしまう。
本当は話したい事、沢山ある。 伊織さんに自分の気持ちをきちんと伝えよう。
夜空に月が出ていて左手をかざすと、伊織さんとお揃いの結婚指輪がキラキラと輝いて反射した。
自分で思っているよりずっと伊織さんが気になっていて、契約結婚ではあったけれどいつの間にかあの人とずっと一緒にいたいと思うようになっていたんだ。
セキュリティーを解除してエレベータに乗り込み、到着したかと思った時には待ち遠しくてへとへとになっていた。
’タワーマンション立派で素敵だけど、急いでいる時は面倒くさい’
そんな事を思いながら最後のロックを解除し、玄関の扉を開ける。