【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
伊織さんは今日遅くなるかもしれないと言っていたけれど、玄関には桃菜の靴と並んで伊織さんのネイビーのドレスシューズがおいてあった。
「あれ?もう帰って来ているのかな」
家に入るとリビングの明かりは煌々と灯っていた。
けれどシンとしていて、人の気配はない。
伊織さんの自室をノックしてみるが、返答はなかった。 こっそりと開けて隙間から覗いて見るも、人の気配は感じられなかった。
まだ帰って来ていなかったか。 そう思い、再びリビングに戻り桃菜の寝ている部屋に行こうとする、と
「ん?」
耳を澄ませて訊いてみれば、ひそひそと静かな話し声が聞こえる。
それは桃菜が使っている部屋の方からだった。 何故か嫌な予感がして、静かに桃菜が寝ている部屋の扉に手を掛ける。
「~~…ッ」
「~~で、 ……なんだ」