【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「何でよッ。こういう時は飲んで酔っ払って全てを忘れた方がいいよッ」
あの日の悪夢が蘇る。
泥酔して暴君になって、伊織さんに暴言を吐いては殴って自分勝手に寝てしまった。
自分が限界までお酒を飲むと、日頃たまった全てを吐き出すタイプだと初めて知った日。
でも不思議だ。 あの日何故ああなるまで飲んでしまったのだろうか。
いつもお酒を飲む時は自分でセーブをしてきた。 お酒に飲まれて人に失態を見せるなんて最低だからだ。
たまには羽目を外すのもいいよ。と人は言うけれど、どうしても私はそうなれなかった。
けれど伊織さんの前では我を忘れてしまったのだ。 そう考えればお酒の力を借りたとはいえ、自分が初めて人に本性を見せた事にもなる。
出されたお酒に一切口をつける素振りを見せない私を見て、明海がビール缶を開ける。
「あのさあ、真凛。今どきバツイチなんて珍しい事でも何でもないよ。
それにその結婚自体がめちゃくちゃなわけで
じーさんばーさんの遠い昔の約束にあんたが振り回される必要はないって」