【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
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「別れて欲しい」
その言葉が彼の口から出てくる事は、マンションに呼び出されいつも通り合鍵を使って玄関の鍵を開けた時から何となく予想はしていた。
玄関に見慣れたピンクのピンヒールがあったからだ。
まさか……そう思った予感はいつでも当たってしまうのだ。 こうなる事は頭のどこかで予想していた。
子供のように小さなピンクのピンヒールに見覚えがあったからだ。
「真凛を嫌いになったとか、真凛に問題があったとかそういう訳じゃないんだ。
ただ俺が勝手に桃菜ちゃんを好きになったんだ…。」
「蒼汰君…。 真凛ちゃん、ぐすん…。本当にごめんね。こんな事になっちゃって…。」
「桃菜ちゃん、泣かないで。俺が全部悪いんだから」
「けれど私…真凛ちゃんは大切な友達なのに…こんな風に傷つける事になっちゃって」
一体これはどういう茶番だ。
目の前の二人は手を取り合うように互いを庇い合っていた。
それが私にはちゃんちゃら可笑しかった。