【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
伊織の友人として、と言ったのに一切口調を変えない彼に警戒しながらも、気持ちを落ち着かせるために紅茶を口に含む。
一体何を言われるのだろう。…聞くのが怖い。 いっそ逃げ出してしまえれば楽になれるのに。
「結論から申し上げますと、真凛さんが見た物は全て誤解です。」
「誤解…?」
「伊織から、事の経緯は聞いています。
真凛さんが帰宅した際、伊織と桃菜さんが部屋で裸で抱き合っていた、と」
全くその通りなんだけど、真顔で言われるとあの生々しい光景を思い出し、へこむ。
カップを持つ手が僅かに震えているのが分かる。
「全て、誤解です。伊織は何もしちゃいません」
「けれど…あんな状況を見ちゃあ…
それに桃菜にこういう事されるの…慣れてるんです…。
だから本当に平気なので…
小早川さんは私が傷つかない為に慰めてくれているのかもしれませんが…」