【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

彼はもう一回こくりと小さく頷くと、穏やかな笑みを浮かべた。

「ええ、実は俺は桃菜さんをマンションに置く事を最初から反対していたんです。
けれど、伊織は真凛さんの大切な人だから大切にしたいと言い張って
だから全ては真凛さんの為だったのです。 俺が知っている伊織は誰彼構わずに親切にするようなタイプの人間ではありません。
どちらかと言えば、冷酷です。 けれどそんな伊織が真凛さんに出会って、変わったのです。」

「私の、ため?
私てっきり…桃菜が可愛いから伊織さんもマンションに住まわせる事を同意したのかなって…」

そう言うと、くすくすと悪戯な笑みを落とす。

「まさか…。どちらかといえば伊織は桃菜さんみたいなタイプ苦手だと思いますよ。
それにこの間は本人を目の前にして、全く何とも思わないとはっきり言っていましたし。
それに可愛いからと言って軽はずみに他人を家にいれる人間ではありません。

伊織は真凛さんに自分を気に入って欲しかったのでしょう。だからあなたが望んでいる事だったら何でもしてあげたかった。
真凛さんは知らないかもしれないですけど、あなたの話をしている時の伊織はとても楽しそうで
市ヶ谷会長の命令だったとはいえ、結婚相手が真凛さんで良かったと私に漏らすほどです。
高校時代からあいつとは一緒だけど、あいつがあそこまで焦った所は今回初めて見ます。
ある意味レアで、ちょっと笑えますよ」

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