【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

「本当に幸せだったのだよ。 これでるり子がいつ迎えにきても、悔いはない」

「そんな……まだまだ元気でいて下さいよ。 そんな悲しい事言わないで」

「ハハ、それもそうだな。まだまだ真凛ちゃんと伊織の子供の姿を見るまでは死ねないな。
私の目下の目標は、ひ孫を抱く事だからな」

市ヶ谷さんの言葉に苦笑いで返す。 …そんな予定はないのだけど、むしろそんな日が訪れるのかも分からない。

ここ数日祖母の葬儀で忙しく、伊織さんは結局会えずじまいだった。
伊織さんの仕事の邪魔をしたくなかったので、祖母の死は小早川さんから伊織さんへ伝えて貰った。

『大丈夫か?』と彼から短いメッセージが入っていたが、『大丈夫です』と素っ気ない返事しか出来ていない。

やらなくてはいけない事が沢山あった。
伊織さんは祖母のお通夜にも告別式にも姿を見せなかった。

「そういえば伊織が来ていたけれど」

「え?」

市ヶ谷さんの言葉に首を傾げると、彼は驚いた顔をしていた。

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