【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

「会っていないのかい?私も挨拶をした程度だったんだが、お通夜にも告別式にも顔を出していたよ。
そういえば、ちょうど真凛ちゃんが席を外している時だったかな?」

「嘘……そんなの知らない。」

「全くあいつも顔を出しているのならば真凛ちゃんに挨拶の一つでもすればいいのに」

「そう、だったんですか…?」

一通りの事務的作業を済ませ、火葬場の外に出て雲一つない空を見上げた。

…伊織さん、来てくれているのならば声位掛けてくれてもいいのに。
それとも、わざと私がいない隙を見計らって来てくれたのだろうか。

それにしても、私も周りが見えていなかった。平気な振りをしていても、祖母の死は大きなダメージを与えていたのだ。周りをきちんと見れなくなるほどには。

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