【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「私の妻は数年前に亡くなりました。 妻が亡くなるまで、私も幸せな生活を送ってきました。
親が決めた結婚相手とはいえ、彼女は私に幸せを沢山くれた大切な人だったからです。
しかしるり子が私の心の中から消えた日は、一日たりともありませんでした。
不躾ですがるり子の行方を探して先日会いに行ってきました。 もう一つ、彼女とした約束がどうしても忘れられなかったから。
それに……もう一度だけどうしても彼女に会いたかったのです」
「もう一つの約束…?」
そう訊ねると神妙な面持ちのままこくりと頷いた。
「私達は結ばれなかった。 けれどもしも互いに子供が出来たらその子供たちを結婚させようと」
「け、結婚?!
市ヶ谷さんとおばあちゃんの子供をですか?」
母の方に顔を向けると、母はぶんぶんと大きく首を横に振った。