【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「ちょっと~~!!そんなに乱暴に扱ったらグラスが割れちゃうでしょう~?
い、いお…伊織が大切にしているコレクションの食器の一つでしょうが!」
まだまだ彼を呼び捨てで言うのは慣れない。
けれど時間はもっともっと無限だから、ゆっくり歩み寄れたらいいとも思っている。
まだまだ伊織さんについて知らない事が沢山ある。 そして彼を知りたいと思う気持ちこそが愛なのだと思うから。
キッチンに行きそっと彼の手を掴むと、一つ咳ばらいをして照れくさそうに頭をかいた。
そういう仕草の一つ一つが可愛らしく見える。
そんな私達の姿を、小早川さんは微笑ましい顔で見つめていた。
「そういえば碧人、今日の店舗の工事の話し合いはお前が行ってくれるんだよな?」
「はい、勿論。こちらの事はお任せください」
「それならいい。 まあ、何か気になる事があれば俺に報告してくれ」
そう小早川さんに言って、彼が私の手を引っ張った。
「どう、どうしたの?!
今日は平日でしょう?お仕事じゃあ…」