【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

「気になるんだろう。彼女の事。 俺にとってはどうでもいい事だが、君にとって大切な事ならば俺にとっても大切な事になる。
それに蒼汰って野郎、真凛の元カレでもあるんだろう?
放って置いたら君の事だから勝手に行きそうだ。
俺は、君が元カレと会うのも嫌だ!」

ぎくりとしてしまう。
桃菜が蒼汰の所にいるのならば、蒼汰のマンションまで行こうと思っていた所だ。

そんな私の考えさえ、伊織さんにはお見通しだったみたいだ。
なんだかんだいって、やっぱり思いやりがあるんだから。

車のキーを持って強引に私を連れ出す伊織さんを、小早川さんは生暖かい目で見守っていた。


―――――

蒼汰のマンションに来るのは、あの日突然の別れ話をされて以来。
結構苦い思い出だったけれど、今となっては懐かしくも感じる。

…それ程時間も経っていない気もするのだけど。 伊織さんと出会ってからがめまぐるしすぎたのだろう。

それはさておき、伊織さんは私と蒼汰を会わせたくないって言ったけれど、そもそも今日は平日で蒼汰は仕事だと思う。

だからマンションに居たとしても桃菜だけだろう。

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