【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「それにしてもなんつーセキュリティーのしっかりしていないマンションだ。
真凛はこんなマンションに住む庶民と付き合っていたんだな」
「あのー…そっちの感覚の方がおかしいんだから。 庶民は結構こういうマンションに住んでますよ。 何事も自分基準で考えるの止めて貰えませんか?」
じろりと睨むように彼を見上げると、ぷくりと頬を膨らませて不機嫌になる。
「何だよ…。まるで俺と君が違うみたいな言い方をして…
そんなの悲しくなるじゃないか」
不機嫌になったかと思えば、次は子犬のように悲しい顔をして肩を落とす。
いやいや!伊織さんみたいに市ヶ谷さんに高級タワーマンションを与えられる方が稀なのだから。
「それにしても出ないな…留守にしているのか、真凛のただの元カレの和泉 蒼汰という男は」
まあ…’ただ’の元カレっていうのは間違いないんだけどさ。
さっきからいちいち言葉に棘があるような気がする。
「出ませんねぇ。 蒼汰は今の時間当たり前に会社に行っている筈ですから、いないとは思いますけど…」
「何だよ、それ! その言い方じゃあ俺が平日に仕事をさぼっているように聞こえる!」