【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「す、すいません。 では座らせて頂きます。
こ、紅茶を頂きます。」
「ミルクは入れますか?それともレモン?」
「す、ストレートで大丈夫です!」
「了解です。少しお待ちくださいね」
ソファーに座りキッチンに立つ彼に思わず見惚れてしまう。 ’結婚悪くないかも…’それが率直な意見だった。
初めは冗談じゃないと思っていた。絶対に恋愛結婚をしたいと思っていた。 契約結婚や政略結婚なんてありえない、と。
けれどキッチンに立つ伊織さん?は美しすぎた。 お茶を淹れる仕草さえどこか品を感じられ、落ち着く声のトーンまでも素晴らしい。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
お茶をテーブルの上に出すと、彼は目の前のソファーにゆっくりと腰をおろす。
’うわあ…近くで見てもかっこいい人…’
もじもじしていると彼は目を細めてふんわりと笑った。
「余り緊張なさらないで大丈夫ですよ、真凛さん。
会長に聞いていた通り可愛らしい女性ですね」
「か……かわい…」