【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
そう言って彼はテーブルの上にブラックカードを差し出した。
思わず生唾を呑み込んだ。
「こんなに良くして下さるなんて…」
「勿論ですよ。突然の結婚で真凛さんのご負担も大きいと思います。
我々に出来る事であれば何でもさせて頂きたく思っております。
もう会長からうかがっている話だとは思いますが、真凛さんのお母様の借金の事はご心配なさらなくて大丈夫です。
真凛さんが大切になさっているご実家の方も大丈夫ですし、ここで暮らす生活の保障はさせていただきます。
真凛さんはここで好きなように過ごしてもらって構いませんし、仕事を続けるのも辞めるのもご自由になさってください。
会長は結婚は早めにして欲しいとの事なので、入籍や挙式は早めに話を進めて貰う事になりますが…」
どうしよう…。結婚しちゃおっかな。
頑なだったはずの自分の心がぐらぐらと揺らぎ始めた。
だって伊織さんが思っていたよりずっと素敵な人だし、全然悪い話じゃない。