【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

伊織さんの考えている事は分からないが、見ず知らずの私と結婚をする条件で彼にも何か利点があるはずだ。

何よりも面食いな自分が憎い…。

周りに自分の運命を決められるのなんか嫌。そう思いながらも、こんな素敵な人が旦那さんになってくれて素敵なマンションで自由に生きて良いなんて言われたら誰でも心が揺れ動くものだ。

「すごい話だと思います。祖母が市ヶ谷会長の昔の恋人だっただけで借金まで返して下さって…」

「それだけじゃあありませんよ。会長は真凛さんを見て一目で気に入ったようだ。
ただの恋に盲目な老人ってわけではありません。 彼なりにインスピレーションで真凛さんを気に入ったのだと思います。
僕もまだ会って数分しか経っていませんが、こんな可愛らしくって礼儀の正しいお嬢さんが来るなんて思わなかったですし」

「そんな、私なんて…」

伊織さんに褒められてついつい照れくさくなってしまう。
ハッと気づき緩んだ頬を引き締める。

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