【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「きっと真凛ならそう言ってくれると思ったんだ。
真凛は強いもんな。 つーか付き合ってる時からいつも真凛が冷静すぎて
俺の事本当に好きなのかなって考える事があって
それを桃菜ちゃんに相談するうちに自然に……」
自然にどうなったというのだ。そもそも男女間の恋愛相談を異性にするなんてやましい気持ちがあるとしか思えないのだ。
本当に本当に悩んでいたのなら、いくらでも相談出来た同性の友人がいた事だろう。
それをこともあろう事が私の仲良くしている友人に相談するとは…。 大体いつ連絡先を交換していたというのだ。
「この家にある私の荷物は全部捨ててしまって構わないから。
じゃあ、さようなら。お幸せに」
別れ際まで可愛げのない女だとは自覚しているが、このままここに居たら恨み言の一つや二つも言いたくなってしまう。
そういう女にはなりたくなかった。
こういう男だとは少しは予想はしていたものの、まさか本当にこんな事になるなんて。
二人に視線の一つも向けずに立ち上がると、そのままマンションを静かに後にした。
蒼汰の桃菜を慰める小さな声と、桃菜の嗚咽だけが部屋には静かに響いていた。