【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「黙っていれば結構かっこいいのにアレじゃあね。 女性と上手に付き合えなさそう…
形だけとはいえ一応新婚なのに放ったらかしだものね」
ソファーに座りテレビをつけると、ぶつぶつと独り言が漏れる。
テーブルの上にはつい先日出来上がった結婚式の写真があった。 夢もクソもない。
突然の話だったので式場もドレスも段取りも全て適当に進められた。 写真に写っている伊織さんと私には笑顔が全くない。
結婚式に伴いお揃いの結婚指輪も用意されたが、それも互いにつける事はなくクローゼットの奥深くに眠っている。 思い入れなぞ一つもない。
形式だけでもとのことで小早川さんが用意した物だったからだ。
素敵だと思っていたタワーマンションからの東京の景色も、何度か見れば見飽きてしまった。
東京タワーもスカイツリーもたまに見るからいい物なのだと悟る。
「あ~あ~…仕事先探さなくっちゃ…。 何もしなかったらただ伊織さんに寄生してるだけになっちゃう…。
今日はおばあちゃんのホームに行ってこようかなあ。気晴らししたいよぉ……」