【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
その日は伊織さんと話し合いをする為に深夜0時を回っても起きていた。
彼が家に戻って来たのは深夜一時過ぎだった。 ソファーの上でうとうとしていると、ドタバタと騒がしい音が響いた。
「何だ、こんな所で寝ていると風邪をひくぞ?」
ネクタイを緩めソファーにどかりと座ると、ふぅーと大きなため息をつく。 相当お疲れのようだ。顔色は余り良くない。
それにしても改めて見て見ると、透明感のある綺麗な顔をしている事。
この一ヵ月は余りに駆け足だったから、彼の顔をぼんやりとしか見ていない。 だからだろうか、ぼやぼやとした印象しかない。
透き通ったように綺麗な肌には、ブラウンがかったサラサラの髪の毛と瞳。 全体的に線が細くて、儚いイメージだ。
眉毛がつりあがっていて、瞳も僅かにつりあがっている。 改めて彼の顔をぼんやりと見ていると不機嫌そうに口を曲げた。
「何だよ、じろじろ見るな」
口が悪く性格に問題があるのもぼんやりと理解していた。
「じろじろ見てたわけじゃないですけど。 おかえりなさい。お疲れ様でした」
ため息混じりでその言葉を投げかけると、彼は不思議そうに目を丸くする。