【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
今、お前って言いかけたわね?!
しかし彼は律義にも昨日私が言った言葉を守ってくれようとしていた。
お前って呼ばないでって言葉。
それが私には意外だった。
しかしそれ位で怒りが収まるというだろうか。 私は曲がった事が嫌いだ。
女性や子供、自分より立場の弱い物を貶めて平気な顔をしている事も許せない。
「何が誤解よ…。朝起きたらびっくりよ。 体中が痣だらけになっているんだもの…」
「……昨日の事、覚えていないのか?」
記憶は途中で断絶されてしまっている。
散々愚痴ったのまでは覚えている。
ぎゃーぎゃー喚き散らし、暴れ回る私を押さえつける伊織さん。
その伊織さんの悲鳴が部屋中をこだましていた事。 …暴れ回る私を押さえつける伊織さん? 伊織さんの悲鳴?
そこまで思い出して、サーっと血の気が引いていくのを感じた。
伊織さんは呆れ返った瞳をこちらへ投げつけて、ふぅーっと大きなため息をわざとらしく吐く。