【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

自分のしでかした事が明確になり、カッと体が熱くなる。
最悪、最悪としかいいようがない。
私はその場にへたりこみ、伊織さんに向かって頭を下げた。

「ご、ごめんなさい…!まさか自分がそんな事をしていたなんて!
本当に本当にごめんなさい!
私が伊織さんに暴力を振るったのに、伊織さんが私に暴力を振るったと勘違いしてしまって。
本当に…ごめんなさい…。 しかもベッドまで運ばせちゃったなんて」

「別にその事はもういいよ。さっき言った重かったつーのも冗談だ、気にするな。
むしろ軽すぎてびっくりした。
それに昨日の君の話を聞いて、俺にも悪い所が沢山あったって気が付いたし、そんなに謝るな。
俺の方こそ悪かった。ごめんな」

私は殺されてしまうかもしれない。 そう思って頭を下げたけれど、飛び出した言葉は意外にも優しいものだった。

恐る恐る顔を上げて見ても、彼は全然怒った素振りは見せていなくって、それどころか少し頬が緩んでいる。

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