【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

「しかし、ぷっ。 もっと大人しい女かと思ったけど…
君は余り人前で酒を飲まないようにした方がいい」

「そ、それは本当に反省しています…。 あー…もう私ってどうしてこうなんだろう…」

「そんなに項垂れるなよ。 いつまでも床に座ってないで立ち上がって」

そう言って、彼は私の手を引いた。
握り締めた手のひらは意外も意外優しいものだった。

「体は大丈夫か。 あー…痣になってるな。 放っておいても治るものだとは思うけど、余りにも痛いようなら医者に行こう」

「いや、それは全然平気です。それより伊織さんの傷の方が…」

「俺は大丈夫だ。多少ビックリはしたものの、所詮女の力だ。
それよりあんなに酒を飲むとは思わなかった。二日酔いだろう。
痛み止めを用意しておいた。 余りに痛いようならそれを飲むように」

「…何から何まですいません…」

「いいよ。酒に誘ったのは俺だ。 まあ、君の本心を訊けて少し安心している。」

君の本心、と言う言葉と同時に彼がニヤリと笑った。
…私一体何を言ってしまったのだろう。

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