【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「一日一回だけでも一緒に食事を取るのが家族だと君は言った。 だから俺もその位の願いならば叶えたいと思う。
お母さんはいなかったけれど、祖父母が元気だった頃は必ず一緒にご飯を食べていたのだろう?
俺は余り家族団らんで食事を取った記憶がないから、そういう配慮に欠けすぎていた。」
私、そんな事まで伊織さんに言ったんだ。
確かに祖父母が生きていた頃は家族で食事を一緒に取るのは当たり前の毎日だった。
だからおばあちゃんがホームに入ってからは一人で食事をするようになって、それがいつも寂しかった。
けれどその話をしたからといって、伊織さんがそこまで私に配慮してくれるなんて。
その気持ちが何よりも嬉しくって、胸がほっこりと優しくなる。
「伊織さん、食べたい物はありますか?
私、良かったら作って待っています」
「料理?…君料理が出来るのか?随分がさつそうだけど…」
「ひどッ!だからそういう所が…!」
「ごめんごめん。別に悪気があって言っているわけじゃないんだ。
俺は別に食べれれば何でもいい。君の好きな物を作ればいい」
「分かりました。 じゃあ、夕ご飯作って待っています」