【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
第三章 旦那様になった人の考えている事が分からない!

第三章 旦那様になった人の考えている事が分からない!




鬱陶しかった梅雨が明けてアスファルトをじりじりと焦がすような夏がやって来た。

因みにこの結婚を機に仕事を辞めたのと同時に携帯を変えた。 ごくごく僅か親しい人間にしか新しい連絡先を教えなかった。

まさか母の借金の代わりに結婚をするなんて面白おかしく周りに吹聴されたくなかったし、ちょうどいい機会で桃菜とは距離をおきたかった。


会社を辞める時桃菜は大きな瞳に大粒の涙を浮かべて「何で…?」と私に問いかけてきた。
性分なのだろうか、私は桃菜の涙に弱い。たとえ何をされようとも、だ。

だから会社を辞める理由は追々話すと誤魔化して、そのまま桃菜との連絡は絶った。 罪悪感はあった。だからそれを正直に明海に相談すると呆れられた。

どうしてあんなに酷い事をされたのにそれでもまだ桃菜に気を遣うのか、と。


放っておけない理由は自分でもよく分かっている。
元来世話焼きな性格な上に、困っている人を見ると放っておけない。

それにどこか頼りなさげな桃菜はいつまで経っても少女のような母に重なった。 だからこそもう桃菜に振り回されないように、連絡を絶ったのだ。

私が心を痛ませる義理なんてないはずなのに、いつも心のどこかで桃菜が気になっていた。

< 68 / 284 >

この作品をシェア

pagetop