【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「おい、真凛携帯が鳴ってるぞ?」
「携帯?誰からですか?」
「番号しか出ていない…。つーかうるせぇし、しつこい。ずっと鳴っている」
用意を終えて慌ててリビングに行くと、テーブルに置いてある携帯がけたたましく鳴っている。
伊織さんとの結婚を機に携帯の番号を変えた。 だから私の新しい番号を知っているのは家族とごくわずかな友人のみ。
「はぃぃ?もしもしー?」
「ちゃん…」
「はーい、もしもしー?誰ですかー?よく聞こえない」
「真凛ちゃん…!!!」
小鳥のように澄んだ高い声には聞き覚えがあった。 いや、忘れる訳がない。
甘ったるい甘い声がいつも通り私の名前を呼ぶ。 思わず背筋に冷たい物が走る。
一体どうして?!番号は教えてなかったはずなのに…!
勤めていた会社を辞める時、逃げるように縁を切ったのに。
「も、桃菜…?」