【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない
「はぁー」
思わずため息が漏れると車のハンドルを握る伊織さんが車を停めた。
「ちょッ…急ブレーキ危ないじゃないですか…」
「そんな大きなため息をつかれたら運転に集中出来ない。気になるだろう」
「気にしないで下さいよ。それよりも伊織さんの車すごいですね。
こんなに乗り心地の良い車に乗ったのは初めてですよ。 さすがですよね」
今日、伊織さんの車に乗るのも初めてだった。 それを実は楽しみにしていた。
ドライブデートみたいと勝手に舞い上がっていたのに、桃菜の電話があったせいで嬉しさも半減した。
乗り心地の良い黒の高級車は滅多に運転をしないらしい。 マンションの地下駐車場に停められていた車は新車同様ピカピカだった。
「何だ?車が欲しいのか?だったら買ってやろうか?」
「ひぇえええ!車をコンビニでジュース買うみたいに簡単に買うって言わないで下さいよッ!」
「別に大した高い物じゃないだろう。 希望の車種はあるか?」
「ないない。無いですよ。それに私ペーパードライバーだし」
「コレクションとして持っておくのも悪くはないだろう。真凛には可愛らしい車が似合うと思うよ。」