【完】この愛を、まだ運命だとは甘えたくない

伊織さんにとって車の一台如きコンビニで飲み物を買う感覚なのかもしれない。

さすがはボヤージュの御曹司だ。 やっぱり価値観の違いは否めない。 けれどお金は自然に降って湧いてくるものではない。

「そういえば碧人から聞いたんだが、君近くのボヤージュの店舗でアルバイトをするとか」

「あ、そうなんです。小早川さんにご紹介していただいて」

「そんな話は一切俺は聞いていないんだが?
どうして俺も知らないような事を碧人が知っているのか疑問しかないな」

ハンドルを握り締めたまま、ムッと口を尖らせる。 どうやら拗ねている様だ。

「忘れていました。 伊織さんとこうやってよく話をするようになる前から勧めてもらっていた話だったので。
言い忘れていた事は謝ります。ごめんなさい」

「別に謝ってほしいとは思っていないがな。 俺が知らなくって碧人が知っているって事は気分が悪い。
それに君が働きたいと思う気持ちも全然理解出来ない。
俺は君にブラックカードを預けているかと思うが? 欲しい物ならば大概手に入れられると思う」

やっぱりむすりとした表情を浮かべたままだった。

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