虐げられて追い出された私、実は最強の聖女でした~聖獣と冥王と旅に出るので、家には戻りません~
 今日も、十分に休息をとったツェツィーリアがゆっくりと目を開けるや否や、やわらかく優しい声が耳朶に響く。
「起きたか? ツェツィーリア」
 彼女に声をかけたのは、ベッドにちょこんと座っている、ほのかに輝く毛をした子犬のような生き物だ。
「おはよう! セレネ」
 ツェツィーリアが金色の艶やかでふわふわの毛並みをぐしゃぐしゃにするほどなで回すと、セレネは小さな前足で彼女の体をぽこぽこと叩いた。
「ふふ、ちっとも痛くないわよ」
「くそ、よせ! 俺様を犬っころみたいになでるんじゃねえ」
「うふふ、でも初めて会ったときは否定しなかったじゃない」
「そりゃあ、あんな小さい女の子が泣いてたら、なにも言えやしねえよ」
 子犬のようで子犬ではないセレネは、ツェツィーリアがこの地下室に入れられたその日の夜に現れた。そのとき三歳だった彼女ももう十五を過ぎたというのに、セレネはずっと子犬のような大きさのままだ。
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