虐げられて追い出された私、実は最強の聖女でした～聖獣と冥王と旅に出るので、家には戻りません～

「今日はなんか沈んでんな。どうしたんだ、ツェツィーリア。あのロクデナシの母親が鞭を振るったのか？」
「……そうよ。でもこの指輪のおかげで傷痕も残らないわ」
「そういう問題じゃねえんだ！　くそったれ！　畜生め！」
　セレネがその見た目にも声にもそぐわない汚い言葉を吐くと、ツェツィーリアは優しく微笑んだ。
「怒ってくれてありがとう、セレネ」
「ツェツィーリア、怒っていいんだぞ？」
　彼女は首を横に振る。
「いいのよ。セレネがかわりに怒ってくれているし。それに、お母様はかわいそうな人だと思うの」
「そんなことねえぞ。おまえの母親は自分勝手な人間だぜ！」
　ツェツィーリアは憤怒するセレネを優しくなでて落ち着かせようとするが、セレネの怒りは収まりそうになかった。

　ツェツィーリアの母であるウルリーケが彼女を嫌悪する理由は、ずいぶんと身勝手なものだった。