We are...
 びっくりした。
 ちゃんと、私たちの気持ちを察していたなんて、これっぽっちも想像してなかった。この三浦先輩はそんな人間なんだ。でも、やっぱりとも思った。

「別に、こだわってません。チャラい先輩なのかなって思っただけです。ノートは使ってください。」
 にっこり笑い、もう一度ノートを押した。
 先輩は視線を私の顔に戻すと、ハハっと笑い
「チャラいかー。うーん。時々言われる。じゃ、遠慮なく借りさせてもらう。ありがとう」
「どうぞ、また来週に」
 ノートをバッグに入れる先輩を置いて、私は教室を出た。

 少し小走りで腕時計で休憩時間の終了を確認した。

 ―次、本館なんだよな。遅刻するな。

 そんな考えがよぎり、歩調を緩めた時、ドカドカドカ―と、後ろから誰かの走る音が響いてきたから、そっと窓際によけて後方に目をやった。
 そして目に飛び込んできたのは、

「…村澤さん、ちょっといい?」
 と息を切らせ走ってくる三浦先輩だった。

「あ、はい。」
 本当はもう授業が始まりそうで、あんまりゆっくりはできないけど。立ち止まった。
 先輩は私に追いつくと、肩で息をしながら、紙切れを一枚さしだした。
「はぁ…はぁ…、ごめ…はっ…運動不足……ヤベ…はっ。」
「あ、いえ大丈夫ですか。」
 スーっと一度大きく空気を吸って、はぁぁぁぁ―と何か一緒に出ちゃうんではないだろうかってくらい先輩は息を吐く。
 それから、んっっと一回咳払いしてから、私を見据え
「ノートありがとう。これオレ携帯の番号とアドレス。もしノート使うとかあったらいつでも連絡して。」
「あ、はい。」
 私は紙を受け取り、開いてみた。
 綺麗とはいえない字で、名前と携帯の番号、アドレスが走り書きされていた。

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