We are...
 誰だかわからなかったけど、すがるような気持ちで通話ボタンを押した。
 でも、分からない相手だから、気持ちと裏腹に素っ気無くでた。その割りに腹に力が入らなくて、薄っぺらい情けない声しかでなかった。

「はい、誰?」
『・・・・・』
 こっちはこれでも渾身の力で出てるのに、返答がなく、苛苛させられる。
「で、誰?イタズラ?」
 怒った声をぶつけたので、相手は焦ったように
『あっ、すみません。』
 と謝ってきた。女の声だった。

 ―なんだよ、イタズラかよ。

 そう思って、切ろうとした時
『あの、三浦奏汰さんのお電話でよろしいでしょうか。』
 と言われ、急いで耳に押し当てた。
「はい…そうですけど」
『夜分にすみません、今日の昼間番号教えて頂いた、村澤です。』

 ―教えた??

 ―村澤???

 ダメだ。頭が働かない。吐いたのに酒が抜けてない。
 沈黙してしまった俺に
『あの、フランス語のノートの村澤羽澄です』
 あっ!!と思いつき
「ごめん、羽澄ちゃんか!頭が働いてなくて!!いつでも電話してって言ったのにオレ。」
 と慌ててまくし立てたら、今度は向こうが沈黙した。

 ―しまった!名前は嫌がられてたのに。

 酒が入ってウッカリすぎもいいところなのを、即座に反省した。
「またまたごめん。」
『・・・あ、いいんです。こちらこそ、もう12時近いってのに掛けちゃって。お休みでしたよね。』
「いや、寝てないから気にしないで。」

『あの、家かえって確認したら、ノート抜けてたので。もし必要だったらお渡ししようと思ったのですが、こんな夜中に必要ないですよね。』
「いや、助かるけど……うちなんてわかんないだろ?」
『いいえ、貰った紙に住所もありましたよ。うちから15分くらいなんです。』
 
 どんだけ自分がアピールしちゃってるのか、恥ずかしくなったけど
「マジ?近所?いいの??」
 と即座に返事してる自分が居た。
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