優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「この書類の数字を専務の手に渡る前か後に改竄したのではないでしょうか」
「それができるのは秘書くらいなものですよ」
広報部部長が私を睨み付けた。
私が疑われているの!?
どうして?
「そんなこと私にはできません!」
「日奈子どうしてそんなこと……」
水和子お姉ちゃんが悲しい顔をして私を見つめていた。
「お待ちください。犯人を決めつけるのはまだ早いのではありませんか?」
「そうだな。今園」
壱哉さんの低く怒気をはらむ声は周囲を凍てつかせた。
「一番得する人間を疑うべきだろう」
確かにという空気が広がった。
「そうなると、営業二課の課長か」
青い顔をして震えていた。
「待ってくれ!わ、私は何もしていない!」
「皆さん、日奈子がやったことです」
「水和子お姉ちゃん!?」
「私と壱哉さんの婚約のお話が社長夫妻から出ていることを知って、嫉妬して私に嫌がらせをしただけなんです」
「こ、婚約?壱哉さんと水和子お姉ちゃんが?」
初耳だった。
壱哉さんを見ると知らなかったのか、わずかに動揺していた。