優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「いやいや、そういうことか。騒がしいから何事かと思って見にきてみたら、日奈子ちゃん。だめじゃないか」

「社長!」

フロアがざわめいた。

「父さん。どういうことです?」

「なに言っているんだ。昔からの付き合いだろう?お前の婚約相手にはぴったりじゃないか。水和子ちゃんなら、お前をよく理解しているし、仕事もできる。尾鷹の嫁として十分にやっていける」

「ありがとうございます。おじ様」

水和子お姉ちゃんはにっこり微笑んだ。

「私の妹が迷惑をかけてごめんなさい」

何が起きたか、わからなかった。

「働き始めたばかりの妹で、会社の大切な書類を改竄すれば、どうなるかなんてわからなかったみたいで。私から注意しておきます。もちろん、処罰も受けさせますから」

「ま、待って、お姉ちゃんっ」

「日奈子。クビにならないだけ、ありがたいと思いなさい」

水和子お姉ちゃんは私の話を聞いてもくれず、元々、私のことを気に入ってなかった尾鷹のおじ様は私が犯人だと決め付けていた。
水和子お姉ちゃんの言葉をすっかりみんなは信じていて、私じゃないと信じてくれたのは壱哉さんと今園さんしかいなかった。
< 102 / 302 >

この作品をシェア

pagetop