優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
目の前を水和子お姉ちゃんを乗せた車が通り過ぎて行った。
壱哉さんは乗っていなかった。
あれ以来、遠目からですら壱哉さんの姿を見ることができなかった。
肩を落として歩いていると、薄手のパーカーにデニム、メガネをかけた渚生君がお隣の玄関から、タイミングよく出てきた。
「日奈子ちゃん。駅まで一緒に行こう?」
「渚生君」
「壱哉から聞いたよ。大変だね」
黙ってうなずいた。
もうなにも言う元気もなかった。
とぼとぼと歩いていると渚生君は言った。
「大丈夫だって。壱哉がなんとかするから」
壱哉さんが?
でもその壱哉さんは―――
「壱哉さん、水和子お姉ちゃんと婚約したみたいなんです」
「それも聞いた。でも、壱哉は日奈子ちゃんが好きなんだよ?」
「そうでしょうか」
水和子お姉ちゃんが婚約者だということが広まっていて、私と壱哉さんのことは誰も知らない。
知っているのは杏美ちゃんと渚生君だけ。
会社では姉の婚約者にまとわりつくウザい妹だと噂されていた。
壱哉さんは乗っていなかった。
あれ以来、遠目からですら壱哉さんの姿を見ることができなかった。
肩を落として歩いていると、薄手のパーカーにデニム、メガネをかけた渚生君がお隣の玄関から、タイミングよく出てきた。
「日奈子ちゃん。駅まで一緒に行こう?」
「渚生君」
「壱哉から聞いたよ。大変だね」
黙ってうなずいた。
もうなにも言う元気もなかった。
とぼとぼと歩いていると渚生君は言った。
「大丈夫だって。壱哉がなんとかするから」
壱哉さんが?
でもその壱哉さんは―――
「壱哉さん、水和子お姉ちゃんと婚約したみたいなんです」
「それも聞いた。でも、壱哉は日奈子ちゃんが好きなんだよ?」
「そうでしょうか」
水和子お姉ちゃんが婚約者だということが広まっていて、私と壱哉さんのことは誰も知らない。
知っているのは杏美ちゃんと渚生君だけ。
会社では姉の婚約者にまとわりつくウザい妹だと噂されていた。