優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
なんとか、遅刻せずに会社に着くと嫌でも自分の立場を思い知らされた。

呑海(どんみ)さんの妹よ」

「怖いわね。いくら専務のことが好きだからって会社の書類に手を加えるなんて」

「おとなしそうな顔でよくやるわね」

入り口から、もうヒソヒソと言われて、エレベーターじゃなく、階段に向かった。
今の私は地下倉庫の在庫整理や片付けを担当していて、一日中、地下にいた。
業者の人が来たら納品作業をして在庫を入力するという仕事だった。
手が遅いせいか、なかなか進まず、以前のように定時には帰れず、夕飯を食べずに待っている緋瞳お姉ちゃんに叱られてしまう。
水和子お姉ちゃんからは『仕事ができないなら、辞めたら?』と、耳打ちされた。
でも、辞めてしまったらそれこそ私が犯人だと認めることになる。
それは絶対に嫌だった。

「トマト缶や果物缶、こんなにあるんですか?」

段ボールの山が積まれた。

「フェアに使用するらしいですよー。使うのはもっと後らしいですが、今欲しいと言われて」

今日もなかなか帰れそうにない。
一人でやる仕事なのか、私以外には誰もいなかった。
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