優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
「俺はお前が日奈子を()めた犯人だと思っている」

「私だという証拠は?」

そんなものあるわけがない。

「証拠を見せられる前に自分から申し出ろ」

いつになく、壱哉は凶悪だった。
重苦しい空気にせっかくのお茶会は台無しになってしまっている。
いつもは周囲にうまく気をつかう壱哉がこんな苛立っているのは日奈子のせい?

「私じゃないわ。だいたい私がどうして自分の成績を落とさなきゃいけないの?」

「そうか、わかった」

軽蔑しきった目で私を見る。
なによ、その目は。
私が犯人だって決めつけて。
だいたい差し替えたのは営業二課の課長なんだし、どんなに証拠を探したところで私がやったなんていう証拠は出てこないのよ。
負け惜しみもいいところだわ。

「昔からの付き合いだ。最後に(なさ)けをかけたつもりだったが、無駄だったようだな」

壱哉は椅子から立ち上がると、背を向けた。
最後?

「私が婚約者でしょう?私で駄目なら、誰ならいいっていうの?壱哉は誰が好きなの?」

また答えないかもしれない。
本当は聞きたくなかった。
壱哉は顔だけ、こちらに向けて言った。
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