優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
壱哉さんが笑いながら、エサをあげた。
ライオンとかトラがよく似合うなあ。
気品があるっていうか、高貴っていうか。
私は―――タヌキ?
思わず、顔を覆った。

「どうした?日奈子?」

「いえ」

一通り動物を見終わると、屋台が並ぶエリアで軽食をとった。

「タイ風焼きそば美味しいですね。ピーナッツが入っていて」

「ドーナツも甘さ控えめでいいな」

タイのドーナツは中がもちもちしていて、外はカリッと上がっていた。
甘すぎないのがいいのか、壱哉さんも気に入ったようだった。

「日奈子。何か記念になるもの買おうか?」

お土産売り場も開いていて、店内には動物グッズがたくさん置いてあった。
壱哉さんをちらりと見た。
トラとライオンのぬいぐるみを交互に見た。
買うとしたら―――

「それ?」

「い、いえっ!ぬいぐるみを持って、梯子をよじ登れませんからっ」

「じゃあ、一緒に住む家に置いておく」

「えっ?」

ひょいっと私の手からトラとライオンのぬいぐるみを取り上げて、レジに持って行った。

「い、一緒に―――」

「行こう」

固まっている私の手を掴んだ。
帰り始めたお客さんに混じって歩きながら、壱哉さんは言った。
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