優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
またドン子呼びに戻されてしまった。

「えええええっ!ま、町を取り仕切る!?」

「気づきなさいよっ!」

ぐるぐると思いを巡らせていると杏美ちゃんが言った。

「ドン子は私の結婚式に出席しないほうがいいわ」

「え?」

「傷つけられるだけよ」

「杏美ちゃん、本当に結婚するの?」

「私のことはどうでもいいの!」

杏美ちゃんは結婚するっていうのに少しも嬉しそうな顔をしていない。

「杏美ちゃん。私は確かに鈍くて、なにも力になってあげれないかもしれないけど、話は聞けるから」

「ば、バカじゃないの!ドン子に相談なんてしないわよっ。なにもできないくせにっ」

「うん。わかってるけど」

苦しそうだったから。

「自分の心配だけしてなさいよ!まだ今なら、お兄様から離れられるわよ。婚約したわけじゃないし。傷は浅くてすむわ」

「で、でも、私、壱哉さんが好きで」

「わかってるわよ。でも―――」

「杏美」

冷えた声が部屋に響いた。
ハッとして杏美ちゃんが顔を強張らせた。

「お兄様」

「常務が探していたぞ。戻らなくていいのか?」

「ええ……。今、戻ります」
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