優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
男の人が笑いながら、私の方を向いた。
杏美(あずみ)ちゃんの婚約者である安島(あじま)さんだった。
どういうこと!?
目を見開き、安島さんと女の人を交互に見た。
女の人は私を見て逃げるように資料室から出ていった。

「誰もこないと思っていたんだけどな。悪いね」

動けずにいる私の肩をポンッと叩いて、出ていこうとした安島さんを呼び止めた。

「まっ、待ってください!今の人は安島さんの恋人ですか?」

「ん?ああ。遊び相手」

「あ、遊び?」

なにを言ってるか、わからなかった。

「杏美ちゃんは知ってるんですかっ!」

「知らないだろうね。いちいち言わないしな」

婚約してるのに?

それに来月には結婚式がある―――

「杏美ちゃんのこと好きじゃないんですか?好きだったら、こんなこと絶対にできませんよ!」

「へえ、君でも怒るんだね。いつもボンヤリしてるだけの子かと思った」

ボンヤリ!?
確かにそういうとこはあるかもしれないけど、この人に言われたくなかった。

「杏美のことは嫌いじゃない。嫌いじゃないから、結婚する。お互いの利害も一致しているからね」

「利害?」
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