優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
壱哉さんは今園さんを自宅に呼び、会社が終わった後の夕方と毎週土曜日、家にきて私にマナーやお茶、お花などの基礎を教えてくれるように頼んでくれた。
習い事の前に万全の予習をしていけば、そうそうバカにされないだろうということだった。

「習い事は何をなさっていましたか?」

「ピアノと習字を。でも、どれもあんまり」

不器用なせいか、やっと人並みくらいかそれ以下だった。

「とりあえず、基本的なマナーから先にやりましょう。後は習い事の予習をします」

「はい」

真剣な顔でうなずいた。

「着物の着付けからしましょう」

二階のウォークインクローゼットから着物を出した。

「あの今園さんはどうして色々できるんですか?」

「会長夫妻より、教育を受けましたので」

「会長夫妻から!?」

「はい。私の母が亡くなり、親戚宅で暮らしていたのですが、うまくいかずにいたのを見かねた会長夫妻が引き取って下さったんです」

「今園さんでもうまくいかないことってあるんですか?」

「たくさんありますよ」

仕事ができる万能な秘書という感じなのに。

「誰にでも苦手なことはあります」
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