優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！

「会長夫妻に育てられたなら、その、親戚の安島(あじま)さんのことも詳しいですか？」

一瞬、今園さんは顔の表情を強ばらせたけれど、すぐにうなずいた。

「杏美(あずみ)ちゃんはどうして安島さんと結婚しないとダメなんですか？」

「安島は昔から尾鷹に仕えてきた家柄で、姻戚関係を続けてきたのですが、会長夫妻の代に安島からの婚約者をお断りして、今の会長夫人が妻となりました。次の代はお互いが一人息子で、今の代では杏美さんがお生まれになったので」

「それじゃあ。杏美ちゃんは昔からの習わしで結婚しちゃうの！？」

「はい。安島は会長の時代より尾鷹に対して不信感があると言い続けて、尾鷹が会社の経営を独占する今の体制も気に入らないようです」

そんな昔から―――家と会社のために結婚？
好きじゃない相手と結婚なんてダメだよ！
しかも、あんな人っ！
私は杏美ちゃんのためになにかできないのかな。
『ドン子ができることなら、私にできるわよ』と言っている杏美ちゃんが容易に想像できた。
ううっ。
でも、何かできないか考えるくらいならいいよね。

「さあ、無駄話はこれくらいにして集中してください」

「はい」

そうだった。
今は汚名返上のため、壱哉さんのため、そして、あの#安島__あじま__#常務を見返すためにがんばるんだからね―――！！