優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！
「喧嘩？」

「えっと、私がお節介なことして、怒らせたんです」

片付けようと皿とカップを手にして、キッチンに持って行った。

「聞こうか？」

首を横に振ると、壱哉さんが悲しい顔をした。

「そんなに頼りない？」

「頼りないなんて！とんでもないです」

むしろ、頼りっぱなしで申し訳ないくらいなのに。

「じゃあ、話して」

椅子に座らせ、目の前に壱哉さんがしゃがみ、大きな手のひらで頬をなでた。
まるで、催眠術にかかってしまったかのように私は心の中にあった言葉を吐き出していた。

「尾鷹の家のことに口出しするとかじゃないんです。ただ杏美ちゃんには幸せになってほしくて。好きじゃないのに安島さんと結婚するってわかったから」

「なるほど」

壱哉さんは困った顔をした。

「それは杏美が決めることだ。本人から断らない限りはどうすることもできない」

「そう……ですよね」

杏美ちゃんは結婚をやめたいと私に言ったわけじゃなかった。
やっぱりおせっかいだった？

「膝、怪我をしているのか」

擦りむいたところから、血がにじんでいた。
言われるまで気がつかなかった。
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