優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
壱哉さんが心配そうな顔をしたような気がしたけど、私だって最近は今園(いまぞの)さんと特訓しているんだから、ちょっとやそっとじゃ動じない―――と思う。
そうだよっ!昔の私とは違う!

「大丈夫です!」

「日奈子ちゃんもこう言っていることだ。日曜日に来なさい」

「……わかった」

おじ様が出て行くと、壱哉さんは髪をくしゃりと手でつぶした。

「だ、だめでしたか?」

「いや……」

壱哉さんが私の顔を見た。

「嫌がらせをされるかもしれない」

「でも、おじ様はぜひって」

「表向きはな。日奈子。当日は俺から絶対に離れるな」

つまり、歓迎の意味で来てほしいとかじゃなく、身のほどをわからせるため?

「は、はい!」

「傷つけられたくない」

そう言った壱哉さんはくるしそうに見えた。

私よりも。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

仕事が終わり、杏美ちゃんとの約束通り、会社前の時計の前に立った。
壱哉さんは残業で遅くなるって言っていたから、杏美ちゃんとの話が長引いても大丈夫!
気合いをいれて、立っているとチラチラと会社帰りの人達に見られてしまった。
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