優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
きょとんとした顔でいると、尾鷹のおば様が場の空気を変えるかのように前に出てきて言った。

「さあさあ!皆さん。お食事しながら、今日、ご招待したお嬢様方の演奏でもお聴きして楽しんでください!」

演奏!?
ハープやら、ピアノ、ヴァイオリン、琴など、美人な人達が弾き初め、安島さんが笑った。

「あれ、全員、壱哉の婚約者候補なんだぜ」

「えっ!?」

「知るか。勝手に連れてきただけだ」

ぎろりとにらみつけ、不機嫌そうな顔で壱哉さんは安島さんをにらんだ。

「あら、日奈子さんいたの?」

「尾鷹のおば様」

「日奈子さんもいかがかしら?」

「えっ!」

「お姉さんの水和子(みわこ)さん。ピアノがすごくお上手だったでしょ?日奈子さんもどうぞ」

視線が集まった。
そ、それはお姉ちゃんで私じゃないのに。
私が下手くそなのはおば様も知ってるはず。

「わかりました」

隣の壱哉さんが返事をした。
おば様は苦笑して言った。

「壱哉じゃなくて日奈子さんに言ってるの」

「日奈子とピアノを弾きます」

私の手をつかみ、ピアノまでいくと、招待客の中に杏美ちゃんの顔が見えて、心配そうにしていた。
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