優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
今日の入社式でも一際目立っていて、私の周りにいた女の子達は壱哉さんを見てざわついていた。
わかるよ、その気持ち。
私もカッコいいなあって思いながら、チラ見してたし。
私がちゃんといるかどうか、気になっていたのか、目があったから会釈した。
本当に親切で面倒見がいい人だよね。
完璧超人と周りから呼ばれるだけあって、人のことを気にかける余裕があるって、私からするとうらやましい。

「そっか。壱哉と働くのかと思っていたよ」

渚生君と壱哉さんは友達で仲がいい。
この町で壱哉さんを呼び捨てにできるのは渚生君くらいだ。

「今日は買い物しなくて大丈夫?よかったら、荷物持ちするよ」

「そんな渚生君に荷物もちなんて、させられません!昨日、まとめ買いしたので大丈夫です」

「日奈子ちゃん、いつも偉いよね。お姉さん達と違って昔から、家のことをしていて」

「えっ?」

そんなこと言われたのは初めてで渚生君の顔を見ると、にこっと微笑まれた。
わ、わあ。テレビでみる顔だ。

「うちの両親も日奈子ちゃんみたいな娘が欲しかったって言ってたよ。残念ながら、こんな息子しかいないけど」
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