優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません！
壱哉さんにあんな真似するなんて！

「ありがとう」

「えっ！？い、いえ」

振り返ると壱哉さんが笑っていた。

「初めて人に庇われた」

「そっ、そうですか」

また余計なことをしてしまったかもしれないと思っていると、壱哉さんが私の手にあった書類を手にした。

「コピーをしに行こうか」

「私がしますから、見ていてください」

「俺が頼まれたのに？」

「私は壱哉さんの秘書ですから。私の仕事でもあります」
さっと壱哉さんの手から、書類を取り返した。

「やっぱり、日奈子には敵わないな」

そう言うと、壱哉さんは笑って髪をくしゃくしゃにしながら、頭をなでた。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


こんな時だったけど、夕飯を二人で食べれたのは嬉しかった。
毎日、壱哉さんは帰りが遅くて、土曜日くらいしか一緒に夕飯を食べれなくて少し寂しい思いをしていたから。

「お茶をいれますね」

ほうじ茶をいれ、貰い物の蕎麦ボウロを小皿にいれた。

「これ、家政婦さんからいただいたんです」

「仲良くなったのか」

「はい。話が合うので」

「そうか」

しばらく、壱哉さんは沈黙した後、静かな口調で言った。
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