優秀な姉よりどんくさい私の方が好きだなんてありえません!
自分こそ渚生(しょう)を盗られたら、どう思うのよ!
今は何を言っても無駄だとわかっている。

「コンビニに行ってくるわ」

部屋に戻り、財布とスマホを手にすると、ちょうどスマホに着信があった。
会社の番号で、出た所で次の勤務先を告げられるだけ。
応じたくはなかったけど、しかたない。

呑海(どんみ)です」

『はじめましてかな?尾鷹商事社長の安島です』

「社長!?」

安島常務が社長?
壱哉はどうしたの!?

『今日の夜、一緒に食事でもどうかな?』

なにかが起きたとすぐにわかった。
これは―――私にとって紛れもないチャンス。
そんな予感がした。

「わかりました。今日の夜に」

このまま、黙って埋もれているなんて冗談じゃないわ!
使えるものは社長だろうが、なんだろうが、使ってやるわ。
そう決意して、久しぶりにきちんとした服をクローゼットから取り出したのだった。


◇ ◇ ◇ ◇ ◇


安島常務は高級ホテルに私を呼び出し、女性が好みそうなフレンチレストランのディナーを予約してあった。
さすがお金持ちね。
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